2009年9月9日水曜日

座る

えくせる、わーど、ぱわーぽいんと等の使い慣れないソフトで作業をしているせいか、腰に痛みが走るようになった。


もともと腰痛もちで整骨院に通っていたが、引っ越したためなかなか行けずにいた。

重い感じの痛みが腰に針を刺される様な痛みに変わったため、少し遠いが古巣の整骨院へ。

8年ほど住んでいた町に久しぶりに訪れてみると、銭湯は更地に、薬屋も更地、お好み焼き屋は移転。
少しずつ変わりつつある。


電車に乗り帰路につく。

8年間、使っていた駅から電車に乗ると沢山の思い出がよみがえる。


そのうちの一つ。




いつもは9:30の電車に乗るが、たまに早く仕事にいかないといけない日があり、その時は9:03の電車に乗っていた。


8時代と9時代の境目の電車のため、少し空いている。立っている人は5人ほどだ。


先頭車両の前から二番目、右側の座席の一番端の席が空いている。
でも立っている人はそこに座ろうとしない。
ラッキー。

即座に座る。

音楽プレイヤーをセッティングし、しばし眠りにつく。


…。


乗り換える駅の手前まできたところで目が覚める。

僕の前に立っている男性が何か大声をだしている。イヤホンで音楽を聞いていたため、一度切る。

その男性は、

「座る!座る!座る!座る!」

と僕に向かって叫んでいる。
いつから叫んでいたか知らないが叫ぶのを止めない。

まわりを見渡すと同じ車両の乗客全員がこちらを見ている。
さらには僕の座っているポジション以外に空いているところがあるではないか。
僕の横に座っていた女性が空いている席を指差し、他にも空いている席ありますよ、と無言で促す、が男性は叫ぶのを止めない。

そうこうしているうちに僕は乗り換えの駅に着いたため、降りてことなきを得た。



以来、9:03の電車で「座る男性」をよく見るようになった。



今里(僕が乗る駅)

鶴橋

谷町九丁目(座る男性が乗ってくる駅)

日本橋(僕が乗り換えする駅)


座る男性は先頭車両の前から二番目、右側の座席の一番端の席にしか座らない。


今里、鶴橋で例えその席が空いていたとしても、その席には誰も座らない。




で、ある日。



9:03
電車に乗る。

いつも通り、先頭車両の前から二番目、右側の座席の一番端の席は空いている。何人か立っているが座ろうとしない。
僕も座らない。

ドアが閉まる、すると、ドアがすぐに開いた。駆け込み乗車をされたようで。

見ると同じ車両に初老の男性50歳くらいだろうか、髪は白髪でスーツを着た、まじめそうな男性が乗ってきた。汗だくで、息をきらしている。

先頭車両の前から二番目、右側の座席の一番端の席が空いているのを見つけるなり、ラッキーと顔に出し、座ってしまった。

多分、同じ車両の人間すべてが思ったであろう。

「あ、あああ〜〜〜。フフフ・・・。そこは駄目なのに〜。」


不安と期待を積んだ車両は鶴橋へ到着。

そこで初老の男性が、

「あ、おはようございます!」

と席を立った。

みると、初老の男性と年齢は同じくらいであろう、スーツのまじめそうな男性が乗り込んできた。髪は灰色。


灰色「お!おはよう」



白髪「いやいや〜、あ、どうぞ。」




と白髪は灰色に席を譲ってしまう。



ゲッ!



同じ車両の人間すべてが思ったであろう。



「おいおい、そこはまずいぞ。」



白髪と灰色は年齢が同じに見えるが、立場はかなり違うようで重役とヒラくらいの差があるようだ。


灰色「書類はもう、できてるのかね?」

白髪「ええ、それはもう、先週にはもう出来上がってまして」

灰色「早ければいいってもんじゃないよ。」

白髪「あ、はい、ええ、間違いは無いように見直してますんで」

灰色「間違いがあっちゃ困るよ。無くて当たり前だよ」

白髪「あ、はい、申し訳ありません」


ってな感じ。



しかし、こっちの胸中おだやかでない。

二人の会話を車両の人間全員が耳をダンボにしていたであろう。

どうなる、どうなる。

座る男性は稀に乗ってこないことがある。

曜日に関係していると思われる。

「谷町九丁目〜、谷町九丁目〜」

着いた。

着いてしまった。

灰色、降りろ!

白髪はともかく、灰色は降りてしまえ。

車両全員が願う。

「電車のドアが閉まります〜駆け込み乗車おやめください〜」



乗ってこない。


セーフ。



と思ったら、座る男性がダッシュしているのが見えた。



あ、間に合うな。


乗り遅れろ。


が、我々の願い届かず、座る男性が間に合ってしまった。


こっからはもう筋書き通りです。


座る男性は灰色に直進です。



「座る座る座る座る座る座る座る座る座る座る座る座る座る座る座る座る」




車両全員の注目が一点に集まる。


灰色は

「え、ああ、どうぞ」

と立ち上がる。


座る男性はドッカリ座る。



このやり取りは予想されていたため、眼をそらしていた。
哀れすぎて直視できるものではない。



このあと、さっきまでベラベラ喋っていた白髪と、灰色の声が一切聞こえない。



一言も。



気になる。



お互いどういう様子で電車に乗っているのか。




気になる。




広告を見るフリをしてチラとみてみる。





見るんじゃなかったとすぐに後悔した。


灰色が鬼の形相で白髪を睨んでいる。
半端じゃない顔で。無言で。
白髪は下を向いている。



灰色の鬼の眼がこういっていた、


「おい、知ってたのか?なあ、答えろや。知ってて俺をあの席に座らせたのか?おい、俺、朝から恥かいたやないか。なあ!」










変に空いている席には気をつけようね!

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